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読書への旅

​星の王子さま

ETHICAでは、2021年に奥岡莞司さんとともに開いて参りました読書会『LIGHT BOOK CLUB』(*)とは別に、あらたな読書の場『読書への旅』をはじめます。

奥岡さんとの読書会では『働くことの人類学』と、田村隆一の詩集『言葉のない世界』を読みましたが、同じ本でも、集まった方々によって、さまざまな読み解き方、お話の展開になることの面白さがありました。読書会とは、皆で本を読み解き、それについて語り合うものでありますが、ある『場』が作られていく過程を見届け、それを共有する機会でもあるようです。

 

であれば、案内人が変わればまた、行き先も、その道筋も変わり、そこでの出会い、見える景色も違うものになるのではないか、という思いつきから、新たな案内人として、今回は鬼頭孝佳さんをお迎えします。そして『私は皆さまの読書の旅のかたわらで、ただ静かに伴奏する人でありたいと願っています。』と、鬼頭さんご自身は<案内人>ではなく<伴奏者>でありたい、と記されているところに、この<読書への旅>が、なにか<音>らしきものとともにあることも予感させます。

 

今回、鬼頭さんと選んだのは『星の王子さま』。

近年、さまざまな訳書が出版され、話題となりました。

どなたが翻訳されたものでも構いませんので、お好きな訳書をお持ちください。

 

皆様の参加をお待ちしております。

 

GALLERY CAPTION/ ETHICA

山口美智留

 

 

(*)『LIGHT BOOK CLUB』は、今後も不定期で開催予定です。

 

 

2022年2月19日(土)  10:30-12:30

2022年3月5日(土)  17:00-19:00 *延期となった1/29の会の代替日です

 

定員: 各回5名

 

参加費: 2,500円 (ドリンク、お茶菓子付き) 

*開催3日前からのキャンセルは全額申し受けます。

 

持ち物: サン・テグジュペリ著『星の王子さま』 

*訳者、出版社は問いません。ご自身で選んでご持参ください。

 

案内人: 鬼頭孝佳(名古屋大学院生・MLA研究所代表)

 

お申込み・お問合せ: e-mail、DMにて承ります。

ご希望の日時、お名前、ご連絡先をお知らせください。

gallerycaption@gmail.com

 

 

ETHICA

岐阜市八幡町14‐3 三輪ビル2F

058-207-8899

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このたび、読書の旅にお付き合いさせて頂きます、鬼頭孝佳と申します。

 

皆さまと読書会をこれからもよおしていくのですが、読書とは本来、外とつながりつつも、本来は孤独ないとなみです。しかし、そうであるが故に、究極的にはだれからも干渉されえない、自由なおこないでもあります。おなじ図書を読んでいても、時間や場所、人間の交通がかわれば、まったくちがった相貌をみせます。その意味で、読書とは真夜中にランタンを片手に、あたかも鉱脈でひっそりと原石を発掘する経験にもにているかもしれません。

 

読書会と言うと、身がまえてしまう人がおおいのではないでしょうか。かくいう私も、じつはその一人です。まわりの目を気にしながら、気の利いたことを言わなくてはならないのではないか。 誰かが正しい解釈をするまで発言をひかえよう。私は人からさそわれて、様々な読書会に参加するごとに、そうした肩身のせまい思いをすることが尠からずあります。なので、私は皆さまの読書の旅のかたわらで、ただ静かに伴奏する人でありたいと願っています。この、私の中での、ただしい読みは確固として存在しますが、万人にとってのただしさではありません。というのも、ただしさは常にいくつかのものとして、この限りある身には顕れるからです。したがって、気心知れたなかまうちに、内緒話をうち明けるかのような感覚で、読書会がいとなめるとよいな、と考えております。

 

これからおこなう読書会は、今はまだタイトルを伏せておきますが、ある大きな図書にいどむための助走でもあります。ですが、一期一会も大歓迎です。私の好みになってしまいますが、おもに、童話や短編小説を読みます。というのも、長編にすぐれた作品があることは承知しているのですが、読むにはそれなりの根気が要るためです。最初から、そこを目指すのは特に私が、恐らく皆さまもしんどくなってしまい、読書を楽しめなくなってしまうだろうと予感します。

 

童話は子どもむけのものだろうと思っている方もいらっしゃることでしょうが、優れた作品には些細な短い表現の中にも、深い世界がひろがっています。そして、童話として紛れこませることで、本来の鋭いメッセージが潜まれて流通している作品というものが意外と多いのです。その意味で、優れた童話には大人になってから、再度の出逢いがあらかじめ約束されているともいってもよいでしょう。

 

今回読む、サン=デグジュペリ星の王子さま、皆様はタイトルをお聞きになった方はいらっしゃると思いますが、実際にお読みになった方はいらっしゃるでしょうか。私がちょうど大学に入学したての頃、原作の著作権ぎれで、一時期、数多の翻訳が書店に出回りました(サン=デグジュペリはフランス人ですが、1943年に英語とフランス語版がアメリカで出版されたのが初版でした)。大切なものは目には見えない、でおなじみの、愛くるしいキャラクターの挿絵の、あの図書。表象を取り扱うギャラリーには不むきと思われるかもしれませんが、はたして美とはそもそも目に見えるのでしょうか。そして、かの本は子どもだったころの作者の友人と困難におちいった大人に向けられたものという献辞がありますが、一体誰にむけられた文章なのでしょうか。あるいは、あの衝撃的な結末、王子はなぜあのようか結末にいたるのでしょうか。

 

この作品は、世界中のあらゆる言語に訳され、映画・舞台・アニメ・ゲームなどにも翻案されており、研究書も山ほどあります。普通、読書会では底本を決めてしまうのですが、せっかくなので、皆さん、これは!と思う星の王子さまを持ちよってみるのが一興でしょう(ちなみに青空文庫にも入ってはいますが、ぜひ皆さまのお気に入りの一冊をご披露くだされば、それだけでも恐らくは楽しいひとときとなるでしょう)。

 

鬼頭孝佳

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